「見た目」の影響力

2026/10/1

エクタス社会

皆さんは「世界地図」と聞いてどんな地図を思い浮かべるでしょうか。地球は球体なので、国の形や面積、方位や距離など全てを完璧に平面で表すことはできません。そのため、昔から人々はさまざまな図法を作り出し、これらの要素のうちいずれかは正しく表せるように工夫をこらしてきました。そうした図法の1つが「メルカトル図法」です。メルカトル図法は16世紀中頃に作られた「角度が正しい」地図で、おもに航海用に使われてきました。しかし、メルカトル図法には大きな弱点があります。それは、高緯度になるほど(赤道から離れるほど)面積や距離が引き延ばされ、実際よりも大きく見えてしまうことです。6年生の皆さんは「大陸」と「島」の定義を勉強したときに、「えっ、グリーンランドってこんなに小さかったの?」と驚いた経験があるのではないでしょうか。他にも、中心からの距離と方位が正しい「正距方位図法」や、面積の比が正しい「サンソン図法」「モルワイデ図法」「グード図法」など、さまざま図法があります。入試でも、2007年の駒場東邦中学校のように、図法の特徴について取り上げたものはよく出題されるので、少なくともメルカトル図法と正距方位図法の特徴については言えるようにしておきましょう。

こうしたさまざまな図法の中でも、メルカトル図法は国際機関や公的機関などで幅広く使われてきました。高緯度地域では面積が拡大されてしまうものの、形のゆがみが小さく、長方形の紙面に表しやすいというメリットが大きかったからですが、そのメルカトル図法が大きな転機を迎えました。今年の9月4日の国連総会で、世界地図を使用する際に、メルカトル図法の地図に替わり「イコールアース図法」の地図の使用を促す決議が可決されたのです。イコールアース図法は2018年に考案された新しい図法で、各国の面積の比を正しく表しつつ、従来の正積図法(面積の比が正しい図法)に比べて形のゆがみが小さいのが大きな特徴です。法的拘束力はないものの、日本を含む多くの国の賛成を得ています。

この決議案を提出したのは、トーゴを中心とするアフリカの国々です(これを読んでトーゴを地図帳で探そうとした生徒の皆さん、素晴らしいです)。メルカトル図法では、低緯度にあるアフリカの国々が高緯度地域に比べて小さい比率で表されるため、それによってアフリカの国々の存在の過小評価や、偏見の助長につながってきたという主張に基づきます。これまでの国際政治において、「地図上の見た目が○○だから」という理由で決められたものがあったかどうかはともかく、メルカトル図法がつくられたのが、ヨーロッパの国々がこぞって海外に進出した「大航海時代」の只中であり、その後アフリカの国々がどのような運命をたどったのかを考えると、この主張にもうなずけるところがあるのではないでしょうか。そして、「グローバルサウス」という言葉に代表されるように、アフリカの国々が急速に経済成長していく中で今回の決議がされたことも、歴史の大きな転換点と言えるでしょう。

そしてここから学べることは、私たちは想像以上に見慣れたもの・聞き慣れたものに影響されやすく、そこから無意識の思い込みや偏見におちいる可能性があるということです。こうした「当たり前」にあえて疑問を投げかけて考えさせるのは、最難関の入試においてよく取り上げられるテーマです。小4・小5の皆さんも、今回のニュースをきっかけに、身の回りのものごとに「本当にこれが『正しい』のかな?」といった視点を持ってみてください。

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