今年の駒場東邦中の入試におもしろい問題が出ていました。大問4で、写真が2枚あってどちらの果実が毒を持つものなのか理由とともに答えなさい、という問題です。まずは、いきなり問題を解く前に、生物の毒の役割について一緒に考えてみましょう。
なぜ毒を持つ生物がいるのかな?と問いかけると、多くの皆さんは自分の身を守るため、と答えるのではないでしょうか。毒を持つハチやクモを攻撃するのはとても怖いことですね。
毒を持つということは、相手を攻撃することに使うこともできますし、自分が捕食されることを防ぐにもとても有効です。しかし、果実に毒があるのは身を守るためなのでしょうか?そもそも植物は果実を食べてもらい、果実の中の種子を遠方へ運んでもらいたいはずです。つまり果実を守って食べてもらえないのでは、目的を果たすことができないはずです。さて、皆さんは果実に毒があるのはなぜなのか、どのように考えますか?
ヒントを出しましょう。毒を持っている果実の多くは、実が熟して色が変わり始めると、それにあわせて毒が減っていくのです。ずっと毒を持ち続けるわけではありません。さあどうですか、何かひらめくことはありませんか。
植物の立場になって考えてみましょう。植物は果実を食べてもらいたい。中の種子を遠くへ運んでもらい。でも、果実の中の種子が十分に成長する前に食べられてしまったらどうでしょう。その種子は新しい芽を出すことができませんね。つまり食べられたくないときは毒を持ち、種子が成長して食べてもらいたいときには毒を無くしていく、ということです。果実の色を変えて、毒がなくなりましたよ、もう食べていいですよ、と食べるタイミングを調整するために毒を利用しているのです。賢いですね。
でも植物の賢さはまだまだこれだけではありません。植物と知恵比べをしてみましょう。植物の種類によっては、わざと毒を少しだけ残すものもあります。完全には毒を取りのぞかないのです。さあ、これはなぜでしょうか?
まず考えるのは、毒が少ないということは少しくらい果実を食べても動物は死ぬことはないということです。でもたくさんの果実を食べると、きっと体に害が出てきます。さあ、これで答えが出るのではないですか。
これも植物の立場になって考えてみましょう。植物にとっては種子を遠方に運んでもらいたい。できればいろいろなところに運んでもらいたいですよね。もし一匹の、あるいは一羽の動物や鳥がたくさんの果実を食べてしまうと運ばれる場所も少なくなってしまいます。つまり独占されないように、多くの動物に少しずつ食べてもらうための作戦として、少量の毒を残す、というわけです。
この話には、まだまだ続きがあります。例えば、果実には毒が無く、種子の方に毒があるものもあります。なぜ、果実ではなく種子なのでしょうか?ぜひ考えてみてください。
さて、このように入試問題でも掘り下げてみるととてもおもしろい話へとつながっていく問題があります。駒場東邦中の先生方は、受験生の皆さんに少しでも自然科学に興味を持って欲しい、そしていろいろと考えられる人になってもらいたい、という気持ちもあってこのような問題を出したのかもしれません。何回か「植物の立場になって」という表現を使いましたが、立場や視点を変えて考察することはとても大切な練習です。最難関校の受験を突破するには、このような思考訓練がとても大切です。理科の勉強が暗記だけになっていないか、一度自分の勉強を振り返ってみてください。考えるよりも覚えてしまうことの方が楽なので、もしかしたら気づかないうちに覚えるだけの勉強になっているかもしれませんよ。