入試で出る統計データ ②乗用車保有台数

2019/4/23

桜蔭中開成中

今回は,2019年の開成中や2018年の桜蔭中などで出題された「乗用車保有台数」について考えてみましょう。自動車の保有台数については,国土交通省の調査にもとづいて月ごとに最新のデータが発表されています。貨物・乗用などの用途や,普通・小型・軽自動車などの車種,そして自家用・営業用の業態などに分けて,正確な登録台数が示されます(一般社団法人「自動車検査登録情報協会」のホームページを参照)。

中学入試では,このデータをもとに「100世帯あたりの乗用車保有台数」が扱われます。各都道府県の自動車保有台数のうち「乗用車」にあたるものを,住民基本台帳による世帯数で割って求められます。

 

※「乗用車」…貨物車,乗合車(バスなど),特種用途(緊急車用やレッカー車など)をのぞいたもの。ナンバープレートの地名の右側にある小さな数字の上1ケタが「3・5・7」の自動車です。

※「世帯」…住まいや日々の生活をともにする家族を1つのまとまりとしてとらえたものが世帯です。厚生労働省の定義では「住居及び生計を共にする者の集まり,または独立して住居を維持し,もしくは独立して生計を営む単身者」とあります。

 

たとえば,次のデータをもとに各都道府県の「100世帯あたりの乗用車保有台数」を計算してみましょう。

 

都道府県名

乗用車保有台数

(千台)

世帯数

(千)

100世帯あたりの

乗用車保有台数

北海道

2804

2762

101.5

東京都

3162

6994

45.2

青森県

730

590

123.7

全国平均

61404

57477

106.8

※乗用車保有台数は2016年12月末現在,世帯数は2017年1月1日現在

 

このように計算してみると,都道府県ごとにかなりの違いがあることが分かります。

「100世帯あたりの保有台数」なので,これをさらに100で割れば「1世帯あたりの保有台数」,つまり「1家庭あたり何台の乗用車を持っているか」が見えてきます。すると,北海道ではほぼ1家庭につき1台,青森県では1家庭につき1.2台の乗用車を持っているのに対し,東京都では1家庭につき0.45台となり,2つに1つの家庭は乗用車を持っていないということになります。

このような違いはなぜ生まれてくるのでしょうか(ここからが,大切なお勉強です)。

まず,この「100世帯あたりの乗用車保有台数」の上位5県と下位5県を以下に示しますので,それぞれのグループに共通する要因を考えてみましょう。

 

上位5県

下位5県

福井県

175.2

兵庫県

92.3

富山県

170.6

京都府

83.7

山形県

168.6

神奈川県

72.4

群馬県

164.8

大阪府

65.7

栃木県

162.5

東京都

45.2

 

 上位5県に共通する特徴は,鉄道・バスなどの公共交通機関があまり発達していないため,自家用車で通勤・通学する人が多いことや,持ち家比率が高いため駐車スペースを確保しやすいことなどがあげられます。こうした地域では自動車がないと買い物ひとつとっても不便になるため,老後に都会から地方へ移住した人たちが「自動車がないと何もできない」と思い知るのは,その好例といえます。

一方,下位5県はその反対で,公共交通機関の便が良く,駐車場代の高さが自動車所有のさまたげとなっています。このほかにも,東京や大阪などの都市部には多くの大学が集まっていて,自動車を所有しにくい一人暮らしの学生が多いことや,そもそも若者の「自動車離れ」が進む中で,これらの県ではそうした若い世代の割合が多いことなども,保有台数を押し下げている要因だと考えられます。こうした都市部では,レンタカーやカーシェアリングなども普及しており,「自動車を持ちたい」と考える人が少ないわけです。

 ここまであげたような考察を裏付けるのが,2019年の開成中でも出題された関東地方の1都6県の通勤・通学事情を示した以下のデータです。

 

 

 

鉄道旅客輸送

(百万人)

2015年

乗用車保有台数

(100世帯あたり)

2016年

通勤・通学時間

2016年

ア

2863

72.4

1時間45分

千葉県

1350

99.2

1時間42分

イ

1264

99.2

1時間36分

ウ

9989

45.2

1時間34分

エ

127

160.8

1時間19分

オ

65

162.5

1時間09分

群馬県

51

164.8

1時間09分

 

鉄道旅客輸送人数が多い都県ほど,乗用車の保有台数が少なくなっていることが分かります。さらに,鉄道旅客輸送人数が多い都県では,通勤・通学時間も長くなっています。ちなみに開成中の出題は,表中のア~オの中から茨城県と埼玉県にあたるものを選ぶものでした。ぜひチャレンジしてみてください。

 

せっかくなので,現在の日本が抱える交通・輸送の問題点や将来について考えてみましょう。

東京などの人口集中が進む都市部では,道路の渋滞や電車のラッシュなどが依然として問題となっているため,鉄道の高架化を進めたり,新たな環状道路が建設されたりしています。2018年には,タクシーのライドシェア(相乗り)実験も行われました。

一方で,高齢化が進む過疎地では,「交通難民」と呼ばれる移動手段を持たない住民が増えていて,こうした地域は国土面積の約6割を占めます。高齢の運転者による痛ましい自動車事故が相次いでいる昨今,AIを駆使した自動運転技術や,ドローンによる荷物の集配など,新しい輸送手段の開発が進められています。

ふだん電車やバスを何気なく利用していると思いますが,皆さんが大人になる頃には,日本の交通はどのような進化を遂げているのでしょうか。ひょっとすると,エクタス生の中から,私たち大人には思いもよらないような画期的な交通システムを生み出す人が現れるかもしれませんね。

 

 

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