御三家の哲学④

2012/7/20

武蔵中

本年度、武蔵中の入試問題から。

 

子どもの自立を待てず、すぐ介入したがる親。目標計画以外の、創造的業務を許さぬ企業。期待、先取り、効率第一・・・ちょっと視野狭窄で、不自然では?そもそも、疲れる。焦るのはやめ、一度、全部、手放したらどうか。自然、偶然に身をゆだね、機が熟すのを待つことが、ときには必要だろう。とにかく「待とう」。      (鷲田清一の文による)

 

今日、何らかの組織とかかわりを持たずに暮している人は、ほぼ皆無でしょう。そして、組織には目的があります。目的達成のための行動や計画があります。私たちは、それらから求められる指標に、どこまで順応し、かつ展開できるかによって評価される社会に生きています。人と人の中で生きるためには、ある程度、社会から求められるものに応えなければなりませんね。社会とのかかわりを脱して、やりたいことをやりたいときにだけする生活に、人間らしさがあるとは思えません。無分別な情緒と欲望を制御し、自己実現のためのヒントを与えてくれる集団性に、大きな価値があることは事実です。社会的要求への順応度を高めようと、現状に満足せず、新しいことを常に学び続ける自己刷新力は、有能な人材たるための条件の一つといえるでしょう。

 

では、この社会のシステムは、何のためにあるのでしょうか?古今、多様な意見が出されてきた、大きな命題です。それでも、自分や家族が、ごく普通のありふれた幸せを手に入れたいと思うのは、自然です。みんな、幸せでありたい。そのために組織を作って、共同作業で生産性を高めようとした。それは、一人ひとりへの、福利還元のためだったはず。

 

でも、あるときから、組織への忠誠度・順応度の高さや「成果」「数値」が、目的になってしまった。特に、社会が複雑になればなるほど、スピードが求められる。「もっとはやく、もっとみばえよく、もっともうかるように、もっと・・・」を繰り返すうちに、それが自己目的化して、本来の目標を見失ってしまった。本年の武蔵中の出題には、こんな問題意識が背景にあるのかもしれません。

 

私たちは、現実的に、社会的要求を完全に無視して生きていくことは不可能です。あくまでも、その範囲内で、自己実現を図るしかありません。しかし、個々の案件に対処する心がけとして、”ちょっと俯瞰してみる”、”行き詰まったら、押さずに引く”、”忙しくても、心だけは悠然と”・・・つまり、一旦、眼前の課題を手放して、等身大の自己に立ち返り、「待つ」心がけと態度も、時に肝要ではないでしょうか。

多くの示唆に富む、今年の武蔵中の出題でした。

関連記事related posts

女子学院桜蔭中武蔵中筑駒開成中雙葉中麻布中

筑駒・男女御三家・駒東等の募集要項を確認しよう 

筑駒・男女御三家・駒東を始めとする主な私国立中学の2021年入試の募集要項が発表されています。小6受験生のご家庭はもちろん、5年生以下のお子様のご家庭も、イメージトレーニングとして、志望校の募集要項をご覧になってみて下さ…

エクタス国語科より女子学院桜蔭中武蔵中筑駒開成中雙葉中駒東麻布中

2025年 中学入試 筑駒・御三家・駒東 国語出典

2025年 中学入試 『国語出典』 <筑波大駒場>湯浅誠『どんとこい、貧困!』(説明文)矢萩多聞、つた『美しいってなんだろう?』(随筆文)東田直樹『小さな嘘』(詩) <開成>古内一絵『百年の子』(物語文)永井玲衣『世界の…

エクタス国語科より武蔵中

2013御三家の哲学③

  本年度、武蔵中の入試出題文から。 異文化の国に対し、”外国”として外から眺め、観察者になっているうちは、不自然な認識や誤解・違和感しか湧かない。自国の文化基準や差異へのこだわりを捨て…

新着記事latest posts

お知らせ

2026/11/5

エクタス算数科

【算数にひらめきは必要か?】

「うちの子はひらめきが足りないので算数の成績がいまいちだ」「基本問題はできるようになったが応用問題になるとひらめき不足を感じる」…どちらも比較的良く見聞きする事案です。果たして本当に算数に『ひらめき』は必要なのか?? に…

エクタス算数科

2026/11/4

お知らせピックアップ

【1/11開催】新小2・3特別体験会

エクタスでは、新小2・3(現小1・2)のお子さまを対象に、無料で授業体験できる『特別体験会』を実施します。最難関中学合格のために、「低学年の今しかできないこと」「低学年だからやるべきこと」を追求するエクタスの指導を体験い…

お知らせピックアップ

pagetop