今年の開成中の理科で温度計の問題が出ていました。問題文の始まりの部分に、日本で初めて温度計を作った人物として平賀源内が紹介されています。昨年の大河ドラマに平賀源内が登場しているので、もしかしたらそこから問題の着想を得たのかもしれませんね。
さて、この平賀源内という人物はとにかく珍しいものが好きで、さまざまなことを手がけたことで知られています。「エレキテル」のことや「土用の丑の日のうなぎ」の話などは有名なので知っている人も多いのではないでしょうか。この平賀源内が、当時は「タルモメイトル」と呼ばれていたオランダ製の温度計を基にして、日本で最初に温度計を制作しています。もし興味があれば、この人物はいろいろなことを行っていますから、他にはどのようなことがあるのか調べてみるのもおもしろいのではないでしょうか。今回のように、どこで入試問題につながるか分かりませんしね。
さて、この「タルモメイトル」ですが、開成中の入試問題では、その紹介だけで後は温度計のしくみや温度の変化に関する問題へと展開していきます。きちんと勉強をしていれば、特殊な知識が無くても答えを出すことができるので、慌てる必要はありません。ですが、せっかくなので「タルモメイトル」について、もう少し掘り下げてみましょう。
オランダ製の「タルモメイトル」を基にして作られた「日本創製寒熱昇降器」とも言うこの温度計は明和5年(1768年)に作られたそうです。中に液体の薬品をいれたガラス管を、目盛りのついた板に取りつけてあり、現代の温度計と基本的なしくみは同じです。ただ、その板に書かれている目盛りは「華氏」で表記されています。現代の日本では、温度は℃でおなじみの「摂氏」を使っているので、「華氏」の数値をそのまま見ても今の私たちにはぱっと温度はわかりません。「華氏」という言葉を初めて聞いた人もいると思いますが、アメリカやカナダでは「華氏」を使っています。気になる人はこれも調べてみてもおもしろいでしょう。
日本で最初の温度計は、このようにかなりきちんと作られたもののようですが、実はガラス管の中の液体が何であったのかがよく分かっていないのです。一説にはアルコールが使われていたとも言われていますので、もしそうであればかなりきちんとした温度計であったとも考えられますが、残念ながら当時のものは現存していないのではっきりとしたことは分かりません。もしかしたらあまり正確に温度を調べることはできなかったのかもしれません。
江戸時代は総じて今よりも寒冷であったとも言われています。ですが現代のような精密な気象観測が行われていたわけではないので、当時の文献から推測された値もたくさん使用して、当時の気温の変化を調べています。ですから、誤差も多く含まれており、分からないこともたくさんあるのが現状です。ですから、もし「タルモメイトル」が正確に温度を調べることができ、それで観測したデータがもしたくさんあったら、きっと当時のことがさらに正確に理解することができたことでしょう。
過去を知ることは、気象の変化が激しい現代に生きる私たちにとって、未来を予測するためのとても大切なデータになります。理科の観測とは、とても根気のいる作業が多いのですが、その役割はとても重要だと思うのです。皆さんもこれからたくさんの実験を学校で行いますが、ぜひ観測の大切さを理解し、しっかりと考え方や手順などを身につけてもらえればと思います。