2015御三家の哲学①

2015/9/10

エクタス国語科より筑駒開成中

【2015筑波大学附属駒場】

長野まゆみ『改造版 少年アリス』より

弟をからかい、つきはなしつつ、身を案じて安全策を講じる兄と、意地をはりながらも兄を慕う弟の、ほほえましい兄弟愛。

アーサー・ビナード『なれ』(詩)より

「ぼく」に脱がれ、置いてきぼりを食ったかのような寂しさを抱えた「上着」を気遣う、「ぼく」の優しさ。

 

【2015開成】

鷲田清一『大事なものは見えにくい』より

ケアする側が「強者」として連帯し、患者達をいたわる反面、被介護者を「弱者」として差別する危険性。

エトガル・ケレット『ブタを割る』より

ほしがる物をすぐに買い与えず、貯金の過程を経験させることで、息子に物やお金の大切さを伝えようとする父。貯金箱と日々ふれあい、笑みを交わし、安心や喜びを分かち合い、守りぬこうとする息子の心に芽生えた「友人を愛する心」。

 

 兄弟愛、優しさ、個の尊重、友情…

 筑駒中や開成中の入試問題の文章で、このような価値観が提唱されることは、かつては少なかったといえます。少年の鮮烈なる内面的気づきを軸に、周囲の友人や大人社会に対する強烈なアンチテーゼを掲げ、独立独歩の気概をもってわが道を進む…そんな人間像が語られることのほうが、圧倒的に多かったようです。

 

 しかし、昨年から、これらの男子最難関中学にあっても、他者との連帯に焦点を当てた作品が多数、登場するようになりました。

 

 まわりに流されぬ確固不動の信念を抱き、突き進むことも、時には必要でしょう。最終的に、自分のことは己自身で責任を持つしかないから。でも、私たちが生きている今、この時代に、最も大事にしたいことは…一人ひとりは、小さくてちっぽけな存在かもしれないけど、支えあい、守りあい、手を差し伸べあっていけば、大きな力になることを信じて、隣人とささやかな絆を結ぶことではないかな…

 

 最難関中学の問題傾向は、世相を先鋭的に反映したものといえるかもしれません。そして、現代の私たちに、こんなゆるやかな指針を与えてくれているのかもしれませんね。

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